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 Poem1975 

   気象庁のリベート   

道を歩いていた年老いた男が
「明日は来ないよ」と言う

気象庁では
「明日になると陽が昇るらしい」と言う

気象庁では今年になってから
冗談を発表するようになった

君も知っている通り
気象庁の発表は嘘だった

「嘘だ、そんなはずはない」と、言いながら
道を歩いていた年老いた男は うつ伏せに倒れ
そのまま行き倒れた

その次の日に、道端では
世界一の正直者の葬式が開かれ
参列したものは一人もいなかった

「あんな不吉なことを言ったバチが当たったんだよ」

君も知っての通り
気象庁では「明日も来るらしい」と知らせていたが
気象庁らしい言い方だ

そう、気象庁の予報は、外れる事がたまにある
外れたとしても気にする者は誰もいないだろうが
ある時、こういう事があったね
  案の定、予報は外れて、次の日があさってになった時
  カレンダー屋が世界中の家を回って
  書き直しをしていた
そこへ気象庁が来て、リベートを渡し、手を結ぼうと言っていた

それからと言うもの、予報は外れなくなったけど
少年たちの楽しみが一つ減ったようなものだね

   星売りの勘定書  

君が本当は星を売っていたのだけど
勘定書きには気を付けた方がいい
そう、値段の付けにくいものだ

客が「アラスカよりは高く買いたい」
と言ったのは当たってるよ

君が「地球よりは安い方がいい」
と言った意味を客は分かったらしくて
  水爆の値段で買い取ってくれたので
   取引は成立した


君は少し旅に出た方がいい
この商売には根気が必要だ
 そう体を売るようなものだ

どんな商売でも同じように
君は髪をとかし、とてもキレイになっていたけど
 まるで どんな商売とも同じようだ

君はお金と命がある限り
体を売っているのだという事が分かったのかい

   サラリーマンのピーク  

くだらない事になっちまいそうだ
「そんな事にはなりたくなかったんだ」
と、君が言っても、それはもう遅いんだろうよ

朝の新聞を運ぶ少年が間違えて
事件を運んでいたらしいけど
とても分かりやすいニュースだったろう

そう、朝 新聞を読むのが日課だと言う
あるサラリーマンにしてみれば
命がけの朝が毎日やって来る訳だ

3日で3年老けてしまって
「もう 朝という朝は消えてしまいたいぐらいだ」
と、言っていたよ

そんな事だから、奥さんとしては朝を浮気の時間にして
年寄りのように早起きしたものだ

テレビでやっていたニュースでは
サラリーマンが消えてしまうのは朝だけではないらしい
特に9時から5時がピークだと言う

仕事をしないわけじゃない
ただ、サラリーマンが目覚めたのだとしたら
これからは公務員のためのピークも欲しいものだ

人が寝ている時間に起きているのが間違いだとしたら
人が起きている時間に寝ていた人が非難され
ある高校生は運動場に倒れたという

そう、すぺて決められている中で
ひとつ間違えば命をなくす事になる

君は何処で覚えたのか 時間をとても気にしていたけど
命がけだったらしいね

   10年前の男らしいタケシ   

タケシは「もうすぐ10年前の映画が出来る」と
冬休みになっても学校には来なかったみたいだ

そう、タケシは誰一人いないところで酒をあおる
誰も止めようとはしなかったけど
子供たちが歌っていた
   いってらっしゃい
   いってらっしゃい
   いってらっしゃい

そう、誰も止めはしなかったけど
老人たちの中にいてタケシは
「ダメなら男らしくあきらめるんだ」と言っていた

誰もが知っているだろう
酒をあおる事までもダメになった時の事を

子供たちは楽しそうに歌っていた
さようなら
さようなら
さようなら

タケシの事を知っていたものはいない

タケシは酒をコーヒーに変え
「10年前の映画は流行らない」と
老人ホームの中でタバコをふかしていたのだと

誰もが将来というものをある程度まで知ってしまったのだろうか
ある所には人が集まらなくなってしまった

そこに残ってしまった男が、誰もいない所で酒をあおる

誰も止めはしない
ただ子供たちは歌っていた
いってらっしゃい
いってらっしゃい
いってらっしゃい

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